この帳簿について
光の勘定がなぜあるのか、何を根拠にしているのか、何を売らないのか——この見本帳の前提をまとめた葉。
なぜこのサイトがあるのか
フィギュアや書籍の帯、飾ったポスターが少しずつ褪せることは、多くの人が経験している。そこで「UVを遮れば退色は防げる」という話が広く信じられている。私もその前提を一度は持っていた。
しかしカナダ文化財保存研究所(CCI)の技術文書を読むと、光に敏感な色にとってUVが担う退色の割合は半分未満、しばしば1/10程度と書かれている。残りの大半はUVではない光——見るために当てている光そのもの——によるものだ。フィルタを一枚足したところで、露光量の問題は動かない、と文書は述べる。
この食い違いを整理したい、という一点からこの帳簿は始まった。UVカット製品の宣伝文句と、保存の専門機関の見解が同じ土俵で語られている場面を、少しでも減らしたい。
何を根拠にしているか
この帳簿の中核となる引用・数値は、すべて次の文書から取っている。
Stefan Michalski, "Agent of Deterioration: Light, Ultraviolet and Infrared"
Canadian Conservation Institute(カナダ文化財保存研究所、カナダ政府機関)
CCI 技術文書 — Agent of Deterioration: Light, Ultraviolet and Infrared
本文の主張、Table 1・2a/2b・4、Figure 3a/3bの観察——帳簿に載せた数値と引用は、この文書に出典を明記したうえで引用している。当方の実験や独自の計算ではない。
このサイトが売らないもの
第七葉に掲げる商品は、届く光の量か、照らされている時間を減らす性質が仕様で確認できたものに限る。遮光・不透明・調光・時間制御——いずれも露光量を下げる手段であり、退色そのものを止める保証ではない。
UVカット製品を、退色対策の主たる解決策として勧めない。CCIの文書は、敏感な色ではUVの寄与が小さいことを示し、露光量を減らすこと以外の選択肢はないと述べている。出典がその効果を限定しているから、正直にその範囲で書く。UVフィルタは寄与の小さい一要因を減らすものとして扱うことはできるが、退色を止めると書くことはできない。
書いている人の立場
私は保存の専門家ではない。出典を確認し、引用の範囲で整理している立場だ。断定できないことは断定しない。読者の部屋の照度や、所持品の光への感度はこちらからは知り得ない。退色までの年数を計算することもできない。
分からないことは第六葉に書いた。見本帳は正直でなければ意味がない、という方針はこの附録にも同じである。